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ICTを活用した教育の推進について

文部科学省生涯学習政策局情報教育課

我が国の将来を担う子供たちに、21世紀を生き抜く力をしっかりと身に付けさせるためには、子供たちの将来を見据え、教育の情報化を通じた新たな学びを推進することが必要です。本特集では、ICTを活用した教育を推進する現在の取組について紹介します。

《教育の情報化に関する最近の状況について(総論)》
●ICTを活用した新たな学びの推進
急速な情報通信技術(ICT)の進展やグローバル化など、子供たちを取り巻く環境は大きく変化しており、このような変化の激しい社会を生きる子供たちに、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和のとれた「生きる力」を育成することがますます重要になってきています。
ICTは、時間的・空間的制約を超えること、双方向性を有すること、カスタマイズが容易であることなどがその特長と言えます。子供たちの学びの場である学校において、このような特長を持つICTを効果的に活用することにより、子供たちの分かりやすい授業を実現するとともに、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得、思考力・判断力・表現力の育成、主体的に学習に取り組む態度を養うなど、子供たちの確かな学力を確実に育成するよう取り組むことが重要です。
文部科学省では、平成23年4月に、2020年度に向けた教育の情報化に関する総合的な推進方策である「教育の情報化ビジョン」を取りまとめました。同ビジョンに基づき、21世紀を生きる子供たちに求められる力を育む教育の実現を目的として、平成23年度より、総務省の「フューチャースクール推進事業」と連携の下、「学びのイノベーション事業」を実施してきました。本事業では、全国で20校の小中学校及び特別支援学校を実証校とし、児童生徒に一人1台の情報端末、全ての普通教室に電子黒板や無線LAN等が整備された環境において、ICTを活用した教育の効果・影響の検証、効果的な指導方法の開発、モデルコンテンツの開発等の実証研究を進めてきました。また、学校におけるICT環境整備については、地方財政措置が講じられており、地方自治体における有効活用が期待されています。
教育の情報化に関する政府決定として、平成25年6月には、「日本再興戦略」「世界最先端IT国家創造宣言」「第2期教育振興基本計画」等が閣議決定され、政府として教育の情報化を推進していくことが示されました。「第2期教育振興基本計画」では、確かな学力を効果的に育成するため、ICTの積極的な活用をはじめとする指導方法・指導体制の工夫改善を通じた協働型・双方向型の授業革新の推進など、ICTの活用等による新たな学びを推進することが示されたところです。
文部科学省では、平成26年4月に、学びのイノベーション事業の成果を踏まえ、今後の教育の情報化の推進に向けて、有識者による多様な観点から意見交換等を行うため、「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」を設置しました。この懇談会では、(1)今後の教育におけるICTを活用した教育手法、(2)教員のICT活用指導力の向上方策、(3)学校におけるICT環境整備の進め方について懇談することとしており、ICT活用の更なる推進方策を検討していくこととしています。

●子供たちの情報モラルの育成
インターネットやスマートフォン・SNSなどの普及に伴い、子供たちが違法情報・有害情報にさらされ、トラブルに巻き込まれる危険性が増大しています。ときには、子供たち自身が加害者となるケースも見受けられることから、適切に情報を取り扱う能力を育成するための情報モラルに関する教育がますます重要となっています。
このような状況を踏まえ、文部科学省では、小・中・高等学校の学習指導要領において、情報モラルに関する教育の充実を図りました。
具体的には、例えば、小・中・高等学校の学習指導要領の「総則」において、各教科等の指導に当たっては、情報モラルを身に付けさせることを明記するとともに、小・中学校の「道徳」において情報モラルに関する指導に留意することや、高等学校の共通教科「情報」において情報モラルに関する内容について学習することとしました。
また、学習指導要領の下で教育の情報化が円滑かつ確実に実施されるよう、教員の指導をはじめ、学校・教育委員会の具体的な取組の参考となる「教育の情報化に関する手引」を作成し、情報モラルの必要性や情報モラルに関する指導の在り方、各教科等における指導例、教員が持つべき知識等について解説するとともに、小・中学校の教員が情報モラルを指導するための基本的な考え方や指導事例等を紹介する「情報モラル教育実践ガイダンス」を作成し、周知を図っています。
平成25年度には、いわゆる「ネット依存」をはじめ、スマートフォンやソーシャルメディアの普及に伴うトラブルの発生など、情報化の進展に伴う新たな課題に対応し、適切に指導を行うための教員向け指導手引書として「情報化社会の新たな問題を考えるための教材〜安全なインターネットの使い方を考える〜指導の手引き」を作成しました。
さらに、文部科学省、総務省、通信関係団体が連携し、保護者、教職員及び児童生徒を対象にした、インターネットの安全・安心な利用に関する講座(「e-ネットキャラバン」)を実施しています。

《ICTを効果的に活用した「新しい学び」》
●学びのイノベーション事業実証研究報告書について
文部科学省では、平成23年度から25年度まで、総務省と連携し、一人1台の情報端末、電子黒板、無線LAN等が整備された環境の下で、ICTを効果的に活用して、子供たちが主体的に学習する「新たな学び」を創造するための実証研究「学びのイノベーション事業」を行い、その成果や課題について、「実証研究報告書」として取りまとめました(図1参照)。以下、報告書の概要について紹介します。

【実証校における取組】
まず、実証校である各小学校、中学校からの報告に基づき、各教科等におけるICTの活用例及びその効果をまとめました。
例えば、
◆画像や動画を活用した分かりやすい授業により、興味・関心を高め学習意欲が向上
◆児童生徒の学習の習熟度に応じたデジタル教材を活用し、知識・理解が定着
◆電子黒板等を用いて発表・話合いを行うことにより、思考力や表現力が向上
といった活用例と効果を掲載しています。

一方で、
◆デジタル教科書・教材等を提示するだけでなく、観察・実験等の体験的な学習が必要
◆ICTを活用して発音や対話の方法を学習するだけでなく、対面でのコミュニケーション活動を併せて行うことが必要
などといった、ICTを指導に活用するに当たって留意すべきことについてもまとめました。

また、特別支援学校の実証校における次のような取組や効果などについてまとめました。
◆重度の障害のある児童生徒の感覚機能、運動機能の向上
◆自立支援や基礎的な学力向上に向けた自作教材の開発・活用
◆本校と病院内の分教室をTV会議システムで接続することによる協働学習の実現
◆入院前の前籍校との交流による不安の解消など復帰への支援

【ICTを活用した指導方法の開発】
実証校では、様々な場面でICTを活用してきましたが、それらのICTを活用した学習場面について類型化を行い、一斉学習(一斉指導による学び)、個別学習(子供たち一人一人の能力や特性に応じた学び)、協働学習(子供たち同士が教え合い学び合う協働的な学び)の三つの大きな類型に分けて、そのイメージをイラストにしました(図2参照)。
また、実証校における実際の学習場面について、類型ごとに分類して掲載しており、「導入」→「展開」→「まとめ」という1単位時間の授業の流れに注目し、効果的にICTを取り入れている実践例を掲載しています(P27図3参照)。

【ICTを活用した教育の効果】
前述のとおり、実証校においては、ICTを活用した指導が行われてきましたが、これらの効果や影響等について、児童生徒や教員の意識の状況・変化を把握するアンケートや学力テスト等を行い集計・分析しました。
その中で、約8割の児童生徒が全期間を通じてICTを活用した授業について肯定的に評価している、教員がICTを活用した授業は効果的と評価している、教員のICT活用指導力が向上する、市販の学力テストにおいて、低い評定の出現率の全国比を経年で比較すると減少している傾向が見られる、などの結果についてまとめました(P28図4参照)。

【学習者用デジタル教科書・教材の開発】
学びのイノベーション事業では、児童生徒が自分のタブレットPCで活用する「学習者用デジタル教科書・教材」の研究開発を行いました(P28図5参照)。そして、実証校において開発したコンテンツを活用した授業を実践しました。
さらに、これらの活用状況や関連団体へのヒアリングの状況等を踏まえつつ、学習者用デジタル教科書・教材等の機能等について検討を行い、その在り方として、
◆多様な情報端末で利用可能、学習の記録を蓄積し・活用できることが必要
◆学習者用デジタル教科書・教材、アプリケーション、これらの管理運用システムなど、学びに有効なシステムが連携した学習環境を構築することが必要
などをまとめました。

【ICT活用の留意事項】
ICTを活用した教育を実施する上で、学校等における情報セキュリティ面及び児童生徒の健康面への影響等の両面において留意すべき事項について、調査・検討を行いまとめました。
情報セキュリティについては、一部の学校においては、情報セキュリティポリシーを未策定又は、首長部局の情報セキュリティポリシーを適用している状況であり、学校の状況等に応じた情報セキュリティポリシーを教育委員会が策定し、適切に運用することが必要です。そのため、学校における情報セキュリティポリシーの策定及び適切な運用を促すため、学校における情報セキュリティポリシー策定等のポイントを整理した資料を作成し、全国の都道府県・教育委員会等に周知しました(図6参照)。
また、健康面における配慮事項については、本事業の調査ではICTを活用した授業の前後で児童生徒の身体の調子に顕著な変化は見られませんでしたが、電子黒板やタブレットPCの画面への光の反射による映り込みや、児童生徒の姿勢の悪化等への対応が必要であることから、ICT活用に取り組む教員等に向けて、健康への影響等に関して留意すべきポイントを整理したガイドブックを作成し、全国の都道府県・教育委員会等に配布しました(図7参照)。
本ガイドブックについては、文部科学省ホームページにも掲載しています。
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/kenko_ict_guidebook.pdf

【今後の推進方策について】
本事業を通じて明らかになった課題等を踏まえ、今後、ICTを効果的に活用した教育を推進し、子供たちの主体的な学びを実現していくための更なる取組についてまとめました。概要は図8のとおりです。
本報告書については、都道府県・市区町村教育委員会等の関係機関に送付するとともに、文部科学省ホームページにおいても掲載していますので、是非御覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/030/toushin/1346504.htm

《松阪市立三雲中学校の取組と今後の展望》
松阪市教育委員会 学校支援課 楠堂 晶久

どのような成果と課題が見えてくるのか、飛び込むようにして取り組み始めた「学びのイノベーション事業」。とにかく進めながら考える、考えながらやってみる、という3年間でした。
タブレットPCを中心としたICT機器が導入されることによって、まず教員は「これを授業で使うには、どうすればよいのか」と考えます。それはそのまま、授業づくりについてもう一度考え直すことにつながり、自然と授業の変容、改革を生み出しました。
この事業に取り組むに当たってキーワードとなったのは「協働学習」でした。この言葉から受けるイメージを基に、三雲中学校の授業づくりが進められました。機器利用として一般的に想定される調べ学習や個人の進度に合わせたドリル学習など「個に応じた学び」を越えて、機器の活用の幅を広げるとともに、教員の授業の在り方そのものも考え直すきっかけとなり、授業の活性化、学校の活性化につながったように感じています。「どう使おう?」「どう使える?」という思考が必然的に生まれ、そのまま授業づくりを再構成する「イノベーション」につながっていったことは、学校教育にICT機器を導入し、利活用することの効果の一つとして挙げられると思います。
そうした取組が、生徒にも変化をもたらしました。例えば、話合い場面において必要なスキルについて3年間継続して調査したところ、3年間の取組により、生徒たちのスキルの伸長が見られました。
実証研究が進むにつれて、活用の在り方も洗練されてきます。ICT機器はあくまでもツールとして、本当に効果のあるところ、意味のあると思われるところで使う、という姿が生まれています。また、今まで何げなく使っていた黒板やノート、プリントなどのアナログツールの効果の再確認という思わぬ効果も生んでいます。
興味深いのは、そういう機器の活用の意味を、教員だけでなく生徒たちが感じ始めていることです。三雲中学校では「先生、ここはノートの方が良くない?」という声が授業で出ている、と言います。「デジタルネイティブ」と言われる世代である生徒たちが、正にツールとして自然に活用していることが伺えるとともに、生徒自身が主体的に学習に関わっている姿であると言えます。教員からの一方向による学習内容の伝達にとどまらず、共に授業を創造する当事者として、双方向に学びを生み出す、教員と生徒の「協働学習」が生まれてきたように思います。
グローバル化が加速する21世紀の社会の中で、学校教育の果たす役割はますます大きくなっていると感じています。それは、グローバル社会を生き抜く力を子供たちに付ける、という意味だけでなく、過度の競争など、グローバル社会の弊害を断ち切り、成熟した21世紀社会へ誘う、という意味もあります。
そんな中で、子供たち自身の学びを生み出すツールとしていかにICTを活用できるか、子供と子供、子供と教員、そして教員同士が学び合うツールとしての機能、更にはそのような姿を生み出すための触媒としての機能が期待されるように思っています。
三雲中学校の取組により、一人1台環境の必要性、重要性が明らかになりました。また、三雲中学校の成果が共有されることにより、他校での導入も前向きに捉えられています。松阪市では、平成26年度より新たに中学校2校への導入を進めています。三雲中学校を含めた3校を、松阪市における先進校として導入を進め、広げていきたいと考えています。構築の基本姿勢を「一人1台環境」に置きながら、計画的に進めます。
また、今後は、人材育成とともに、個人の力に頼らないようなシステム、仕組みづくりも重要です。計画性を持って取り組んでいきたいと考えています。

《「新たな学び」を全ての学校で》
学びのイノベーション推進協議会委員、信州大学学術研究院教育学系教授 東原 義訓

学びのイノベーション事業は、未来の学校の姿を具体的に示してくれました。ビジョンや構想ではなく、現実のものとして体感させてくれたことに最大の意義があったと思います。実証校で学んだ児童生徒、最初は戸惑いつつも最大の努力をしてくださった先生方、公開授業等を参観された全国の教育関係者が実感できたものは教育界の貴重な宝物です。この宝物を想像するのに役立つ情報が、実証研究報告書に掲載されています。
また、本事業は、先生方をはじめとして、ICT関連企業、教科書出版社、教育ソフト関連企業、研究者、行政の方々など、多岐にわたる人々が協力して初めて成し得た巨大プロジェクトであり、これからの教育の創造を担う多様な専門性を有する人々の人的ネットワークの形成にも大きく貢献したと言えるでしょう。
ICT活用の面で特に進んでいた学校が実証校となったわけではないのに、これだけの成果を上げることができたという事実は、日本全体の今後の展開に大きな期待を抱かせてくれます。
確かに当初は、様々な問題に遭遇しました。タブレットPCがネットワークに安定的に接続できないとか、協働学習用ソフトや学習者用デジタル教科書が快適には機能しないなどの技術的な問題です。事前から心配していた事柄もありましたが、これだけの規模で実施するのは、日本の教育界にとって初めてのことでしたから、遭遇して初めて関係者が認識を新たにするといった課題も少なくありませんでした。幸いなことに、関係者の献身的な御尽力と、先生方の御理解と忍耐により、一つずつ技術的な問題が解決され、報告書に記載されているような成果に至ることができました。
ここでの経験は、教育におけるICTの有効活用を進めるに当たり、財産になっていますし、ポイントは報告書に記載され、広く共有できるようになっていますから、これからの取組では、一段上のステップに進むことができます。
一方、先生方もICTを活用した指導の経験を有する方ばかりではありませんでしたから、最初から、報告書に掲載されているような実践が行われたわけではありません。チャレンジ精神旺盛でアイディア豊富な先生の先導や、ICT支援員の助けによって、少しずつICTの活用が拡大していきました。校内研究会をはじめ、実証校が相互に公開授業を参観し合ったり、シンポジウム等で実践事例を交換したり、大学の研究者からのアドバイスを得たりなど、重層的な取組によって、「ICTを活用してみる段階」から、ICTの活用による児童生徒の主体的な学びや、協働的な学びが実現されるようになっていきました。
成果として、一人1台のタブレットPC、電子黒板、学習者用デジタル教科書等の活用によって、次のような「新たな学び」が生まれることが示されました。
○個別学習:一人一人の興味関心や個性に応じて、豊富なデジタル教材やシミュレーションを活用して納得いくまで思考を深めたり、自分の考えを表現したりする、多様で主体的な学び。
○協働学習:ICTの活用により、児童生徒全員が発言でき、全員が相互に多様な考えを知ることができ、思考過程の可視化や分類整理も可能となる。異なる考えとの出会いや衝突から、相互理解、支え合い、高め合い、そして、新たな知の創造につながる学び。
本事業の3年間を振り返ると、実証校以外の学校が学ぶべき点として、次のことが言えるのではないかと、私は考えています。
○ICT活用はどのような場面で有効なのかをよく吟味し、指導力を向上させてから導入することが重要である一方で、可能な活用をどんどん進めていくと、結果的には有効な活用につながったというのが本事業で見られた傾向でした。積極的な活用実践を通して、児童生徒の反応を肌で感じていくと、新たな学びの可能性が見えてくるものと考えます。
○そのため、全児童生徒数分のタブレットPCを導入する予算が直ちには獲得できない場合であっても、一人1台環境がもたらす可能性を体験できるように、どの学校も一クラス分のタブレットPCを整備することを期待しています。ICTの有効性のエビデンスが示される一方で、自分自身が体験できる環境がないと、「新たな学び」の可能性を先生方が実感することが難しいと考えます。今後も「新たな学び」を国や自治体関係者が推進していくことを期待します。

《学校におけるICT環境の整備について》

●学校におけるICT環境の整備状況
学校におけるICT環境の整備状況については、平成25年3月1日現在、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は6・5人(前年度6・6人)、超高速インターネット接続率は75・4%(前年度71・3%)となっています。都道府県別の整備状況を見ると、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、8・2人から4・5人まで、超高速インターネット接続率は、51・9%から98・6%までとなっており、整備状況に差が生じています(図1参照)。このほか、電子黒板の整備状況については、整備台数が約7万2000台であり、前年度の約6万4000台から約8000台増加しています。また、実物投影機の整備台数は約14万1000台で、前年の約12万6000台から約1万5000台増加しており、ICT機器の整備が進んでいます。

●地方財政措置の活用について
学校のICT環境の整備については、従来より地方財政措置が講じられており、平成26年度から4年間は第2期教育振興基本計画で目標とされている水準を達成するため、各年度約1678億円措置されます。これを受けて、平成26年2月に、各都道府県・指定都市教育委員会に対して、当該措置の内容について通知するなど、積極的な活用を促しています(図2参照)。

《学校における情報モラル教育の推進について》

●情報化社会の新たな問題を考えるための「指導の手引き」と教材の活用
近年、ICT機器の急速な普及に伴い、私たちは高い利便性を得られるようになりました。児童・生徒も例外ではなく、平成25年度「インターネット利用環境実態調査(内閣府)」によると、小学生の携帯電話等の所有率は約37%、中学生の同所有率は約52%、高校生の同所有率は約97%となっています(図1参照)。そして、所有している児童・生徒の多くがスマートフォンに移行しつつあります。また、青少年の携帯電話・スマートフォンを通じたインターネット利用が長時間化しており、利用者の約4割が平日1日2時間以上、インターネットを利用しています(P34図2参照)。
こうした中、児童・生徒は無料通話アプリやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、オンラインゲーム等の長時間利用による生活習慣の乱れや、不適切な利用によるいわゆる「ネット依存」に陥ってしまったり、ネット詐欺や不正請求、SNSによるトラブルなどに巻き込まれてしまう可能性が高まっている現状があります。
このような現状を踏まえ、文部科学省では、教員が、ICT機器を健康的に正しく使用し、コミュニケーションツールとして適切に活用する方法を、児童・生徒に指導するため、「情報化の進展に伴う新たな課題に対応した指導の充実に関する調査研究」を行い、情報モラル教育に関する指導力の向上に取り組みました。
具体的には、教員の指導用に「情報化社会の新たな問題を考えるための教材〜安全なインターネットの使い方を考える〜指導の手引き」とそのDVD教材(P34図3参照)の作成を行いました。その内容としては、児童・生徒自身に問題点や解決方法を考えさせるための授業展開を基本としています。また、情報モラル及びインターネットに関連するトラブルなどについて、児童・生徒に問題点を気付かせ、その解決方法について考えさせることを支援できるような教材となっています。
教材の一例として、例えば、SNS等のトラブルを題材にした教材は、いつでもどこでも使えるとは限らないスマートフォン等の特性を理解した上で、相手の状況を想像し、思いやる心を育てることを目的としています。SNS等で常に友達とつながることによって、友達関係を維持することに必死になってしまい、すぐに返信しないとひとりぼっちになってしまうのではないかという状況を解決するために、SNS等に縛られないことや、無理な返信約束を見直すこと等、トラブルを防ぐための具体的な手立てについて児童・生徒自身に考えさせるものです。
教材は、SNS等のトラブルを題材にしたもののほかに、ネット依存、ネット被害や適切なコミュニケーションを題材としたものがあります。
また、情報モラル教育は、保護者との連携が必要不可欠であることから、学校の情報モラルに関する方針を保護者会等で伝え、協力を要請することや、家庭でICT機器利用のルールを考えてもらう等の必要性も教材で示しています。
これらの教材を活用することにより、学校が学校教育における情報モラル教育に体系的に取り組み、学校全体で教員がその内容を共通理解して指導することにより、児童・生徒はICT機器を健康的に正しく利用し、円滑なコミュニケーションや人間関係の構築ができるようになります。
なお、手引書やDVD教材は、文部科学省「教育の情報化」ホームページ(http://jouhouka.mext.go.jp/)に掲載していますので御活用ください。

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