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特集
中学校夜間学級(夜間中学)について

文部科学省初等中等教育局
初等中等教育企画課教育制度改革室

 中学校夜間学級、いわゆる夜間中学とは、市町村が設置する中学校において、二部授業が行われる学級のことを指します。戦後の混乱期の中で導入され、今日に至るまで、様々な事情を抱える方々の就学機会の確保に重要な役割を果たしてきました。この夜間中学について、今年、文部科学省として初めて詳細な調査を公表しましたので、その概要についてお伝えするとともに、夜間中学に関する文部科学省の取組を御紹介します。
夜間中学の現状

夜間中学は、二部授業が行われる中学校の学級のことを指します。授業が行われる時間帯は夜間ではありますが、市町村が設置する公立中学校です。戦後の混乱期の中で、生活困窮などの理由から昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから、これらの生徒に対し、義務教育の機会を提供するため、昭和20年代初頭から設けられてきました。
昭和30年頃には、設置中学校数は80校以上を数えましたが、就学援助策の充実や社会情勢の変化に伴って自然減少し、現在では8都府県25市区に31校が設置されています。
現在の夜間中学は、様々な理由により義務教育未修了のまま学齢を超過した方々や、本国で義務教育を修了していない外国籍の方々の学習ニーズに対応した幅広い教育を行うなど重要な役割を果たしています。
また、今後は、不登校等のためにほとんど学校に通えないまま、学校の教育的配慮により中学校を卒業した方々や、昼間の学校に通うことができない不登校生徒に教育の機会を提供していくことも期待されるものと考えています。
このように様々な役割が期待される夜間中学ですが、その実態やニーズについては、必要なデータが不足している状況にありました。そこで、文部科学省では、今後の中学校夜間学級に対する支援や設置促進に向けた施策の検討のため、中学校夜間学級等に関する詳細な全国実態調査を初めて実施し、今年4月に公表しました。次項では、まずその概要についてお伝えします。

中学校夜間学級等に関する実態調査の結果について

本調査は、中学校夜間学級の設置ニーズ、設置に係る検討状況、詳細な実態等について調査を行い、夜間学級に対する支援や設置促進のための施策の検討に資することを目的として、平成26年5月1日現在の状況について、全都道府県教育委員会、全市区町村教育委員会に対して調査を行ったものです。本調査により、基礎的なデータのほか、今後の施策展開に役立てることができる様々な実態が明らかとなりました。
【結果の概要】
夜間中学は、全国で8都府県の25市区において31校が設置されており、1849名の生徒が在籍しています。
近年では日本国籍を有しない方が増加しており、全体の約8割を占めています。学年別で見ると、途中の学年から編入する生徒もいるため第3学年の生徒が多く、また、全体としては女子生徒が多くなっています。年齢別で見ると、学齢超過者のみが在籍しており、おおむね各年齢層で15%程度の割合で均等に在籍している傾向が見られます。
入学理由別で見ると、高等学校入学や職業資格取得のほか、中学校程度の学力や読み書きの習得など、多様な入学理由を持った生徒が在籍していることが分かります。卒業後の進路別で見ても、高校進学、就職などの進路が開かれていることが判明しました。
夜間中学の設置ニーズに関しては、今回の実態調査においては、夜間中学の設置に関して14の未設置道県で要望がなされていること、全市区町村の1割弱の市区町村において域内に自主夜間中学や識字講座等の取組があること、自主夜間中学や識字講座等の生徒数が約7400人いることなどから、夜間学級の設置に関する一定のニーズがあることが明らかになったものと考えています。
いわゆる自主夜間中学とは、市民ボランティア等の有志が中心となって、外国人や義務教育未修了者等に基礎教育等を施すことを目的として、社会教育施設などで自主的に運営する組織又は取組のことを指します。今回の調査では、自主夜間中学や識字講座等には、不登校等により義務教育を十分に受けられなかった義務教育修了者も学んでいることが分かりました。
各夜間中学における教育課程や教育の実態としては、学齢超過者等の生活経験や識字能力などの実態に応じて、教育課程や教材に様々な工夫が見られることが分かりました。主な工夫としては、例えば、夜間中学を設置する全31校のうち、夜間中学で学年の枠を超えた習熟度別学級編成を実施しているものが23校、基礎的な識字教育に重点を置いた学級を設置しているものが11校、日本語指導が必要な生徒に対する特別の教育課程の編成・実施の取組が13校あること等が挙げられます。
そのような工夫等に対し、各市町村教育委員会の支援の状況は様々です。夜間中学を設置する25の市区のうち、夜間中学の生徒に対する就学援助相当の経済的支援を実施しているものが20市区、生徒の実態を踏まえた教材購入・教材開発への支援を実施しているものが10市区、給食を実施しているものが17市区など、様々な取組の実態も判明しました。
文部科学省としては、これらのデータを、今後の施策展開に役立てていきたいと考えています。
※調査結果は、文部科学省ホームページに掲載しています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/yakan/index.htm

夜間中学に関する文部科学省の取組

文部科学省の支援策について

文部科学省では、平成27年度予算において、「中学校夜間学級の充実・改善等への取組事業」を実施(平成26年度予算の300万円から、平成27年度は1000万円に増額)しています。 
本事業においては、まず、義務教育段階の学習を必要としている方々に夜間中学の存在を幅広く知ってもらうための広報の強化として、夜間学級の果たしている役割や設置場所等を示したリーフレットを作成・配布することとしています。
また、前述のとおり、夜間中学には様々なニーズを持った方々が通っているため、多様なニーズに対応するための教育上の工夫が必要です。そのため、夜間中学における学習指導、生徒指導の在り方などに関する委託研究を行い、外部講師による研修や先進的な取組の研究、教材の開発等の取組を支援しています。
さらに、今年度からは、未設置の道県において夜間中学の設置に向けた検討を行っていただくための必要経費を計上しています。
今回の実態調査において、夜間中学の設置に関するニーズが明らかとなっている一方、夜間中学は現在8都府県での設置にとどまっています。文部科学省としては、当面の施策として、少なくとも各都道府県に一つは夜間中学が設置されるよう、その設置を促進したいと考えています。
設置に向けた検討に当たっては、夜間中学に就学を希望する方々は夜間中学が設置されていない自治体にもいることが想定されることから、設置市区町村と未設置市区町村、広域的行政を担う都道府県との間で、経費や広報面も含めた役割分担を行っていただく必要があると考えています。
このため、文部科学省としては、平成27年度予算において、未設置道県の教育委員会において、域内の市町村教育委員会と連携しながら、設置に向けた検討を行っていただくための必要経費を計上したところであり、こうした事業も活用しながら、国、都道府県、市町村が連携協力して夜間学級の設置が促進されるよう取組を加速させていきたいと考えています。

義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について

夜間中学では様々な背景を持つ方々を受け入れていますが、従来文部科学省では、一度中学校を卒業した方が夜間中学に再入学を希望した場合の考え方を明確に示していませんでした。このような中、諸事情からほとんど学校に通えず、実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により中学校を卒業した方のうち、中学校で学び直すことを希望する方(入学希望既卒者)が、夜間中学に入学を希望しても、基本的に入学を許されていないという実態が生じていました。
義務教育を受ける機会を全ての方に実質的に保障することは極めて重要ですが、文部科学省の調査では、義務教育を十分に受けられなかった義務教育修了者がいわゆる自主夜間中学等で学んでいること等が明らかとなっています。
また、親による虐待や無戸籍等の複雑な家庭事情等により、学齢であっても居所不明となったり、未就学期間が生じたりしている方々の存在も明らかになっています。
さらに、不登校児童生徒に対しては、学校外での努力を評価し指導要録上出席扱いとするなど柔軟な取扱いも行われており、学校に十分に通わないまま卒業する生徒が今後も生じると考えられます。
文部科学省では、このような状況を踏まえ、一定の要件の下で、入学希望既卒者の夜間中学での受入れを可能とすることが適当と判断し、「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について」として都道府県教育委員会等に通知しました。
【基本的な考え方】
① 市町村教育委員会は、入学希望既卒者があったときは、入学希望理由や既に卒業した中学校での就学状況について、本人及び既に卒業した中学校の設置者等に確認し、入学の可否を総合的に検討する。
  その検討の結果、当該入学希望既卒者が、不登校等で中学校課程の大部分を欠席していた等の事情により、実質的に義務教育を十分に受けておらず、義務教育の目的に照らし、再度の中学校入学が適当と認められる場合は、各夜間中学の収容能力に応じて、積極的に入学を認めることが望ましい。
② 入学の許可に際しては、出席日数等の一律の外形的な基準ではなく、個々の事情に応じて柔軟に判断することが望ましい。
③ 入学希望既卒者から先立って相談があった場合は、その方の立場や心情に配慮した対応が望まれる。その際、例えば夜間中学の見学や試験登校を認めるなど、きめ細かな対応に努める。
市町村教育委員会におかれては、これらの考え方を参考に、可能な限り受入れに取り組んでいただきたいと考えています。
※通知の全文及び想定される基本的な手順は、文部科学省ホームページに掲載しています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1361951.htm

終わりに
 
冒頭でも述べたとおり、夜間中学は、時間帯こそ夜間ではありますが、市町村が設置する公立中学校です。
国語・英語・数学をはじめ、理科や社会、体育や音楽など、昼間の学校と同じく、教科等の学習を行っています。運動会や修学旅行などの学校行事も行われていますし、多くの学校では給食も実施されています。そのような環境で、様々な年齢、様々な国籍の方々が、同じ教室で共に学んでいるのが夜間中学です。
通われている方々の背景は、例えば、戦後の混乱期に学齢期を迎えたために学校に通えなかった方や、いわゆる中国残留邦人の方、親の結婚に合わせて来日したものの日本の学齢を超過していた子供たち、昼間の中学校で不登校となって中学校を卒業しなかった方など様々ですが、いずれも、何らかの事情で学齢期に義務教育の機会を十分に受けられなかった方々です。
憲法26条では、教育を受ける権利と、その充足を図るための義務教育について規定しており、教育基本法第5条においては、義務教育として行われる普通教育は、「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるもの」と規定されています。これらを踏まえると、何らかの事情で本来受けられるべきであった義務教育を十分に受けることができないまま学齢期を超過してしまった方々に対し、社会の形成者として自立するために必要な義務教育の機会の確保策を講ずることが極めて重要です。
そのような方々に対し、義務教育相当の学習機会を実質的に確保できるよう、文部科学省としては引き続き、夜間中学の設置促進と、既存の夜間中学の学習指導等への支援の拡充に積極的に取り組んでまいります。

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