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特集2
TIMSS2015及びPISA2015の国際結果について

国立教育政策研究所 国際研究・協力部国際共同研究室
教育課程研究センターTIMSS事務局

平成28年11月29日に「IEA国際数学・理科教育動向調査」(略称:TIMSS)、12月6日に「OECD生徒の学習到達度調査」(略称:PISA)の2015年調査の国際結果が世界的に公表されました。
本特集では両調査の国際結果やその分析結果から見る日本の特徴、そして調査結果を受けた取組について述べることとします。

TIMSS、PISAとは?
TIMSSは、国際教育到達度評価学会(IEA)が、児童生徒の算数・数学、理科の到達度を国際的な尺度によって測定し、児童生徒の学習環境等との関係を明らかにするため、1995年以降4年ごとに実施しています。2015年調査では、小学校の調査は50か国・地域、中学校の調査は40か国・地域が参加し、日本では小学校4年生、中学校2年生の児童生徒を対象に、小学校148校、約4400人、中学校147校約4700人が参加し、筆記型調査で実施されました。
PISAは、経済協力開発機構(OECD)が、義務教育修了段階の15歳児が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するため、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、2000年以降3年ごとに実施しています。2015年調査では、72か国・地域が参加し、日本では高校1年生を対象に198校、約6600人が参加し、コンピュータ使用型調査で実施されました。
TIMSSとPISAとでは、対象学年や調査内容のほか、調査目的にも違いがあります。TIMSSは、学校で学んだ知識や技能等がどの程度習得されているかを調査の目的としているのに対し、PISAは、各国の子供たちが将来生活していく上で必要とされる知識や技能が、義務教育修了段階においてどの程度身についているか評価することを調査の目的としています。また、両調査の日本での実施は、国立教育政策研究所が担当しています。

TIMSS2015について
TIMSS2015の実施
2015年調査の実施に関連して、(1)調査の歴史(2)調査の内容(3)算数・数学、理科の問題(4)算数・数学、理科の得点の算出(5)調査対象者の抽出の概略は以下のとおりです。

(1)調査の歴史
TIMSS2015は、TIMSSという名称になって6回目の調査です。前身として位置付く調査は、1964(昭和39)年実施の第1回国際数学教育調査(FIMS)などがあり、長い歴史を有しています。

(2)調査の内容
2015年調査では、児童生徒を対象とした「問題」(算数・数学、理科の問題)及び「児童生徒質問紙」、教師を対象とした「教師質問紙」、学校長等を対象とした「学校質問紙」、保護者を対象とした「保護者質問紙」、各国調査責任者を対象とした「カリキュラム質問紙」が実施されました。保護者質問紙は今回初めて実施され、第4学年でのみ実施されました。なお、国際的な調査対象母集団の第4学年、第8学年に対して、我が国では小学校4年生、中学校2年生が対応します。このように多様な調査が行われているのは、TIMSSの実施母体であるIEAにおいて、カリキュラムを「意図したカリキュラム・国が示したこと」「実施したカリキュラム・教師が実際に教えたこと」「達成したカリキュラム・児童生徒が身につけたこと」の3層から捉えているためです。

(3)算数・数学、理科の問題
「問題」については、小学校4年生、中学校2年生ともに、それぞれ問題冊子が14種類準備されました。各問題冊子は第1部、第2部に分けられており、それぞれ算数・数学又は理科の問題ブロックで構成されていました(表1-1 問題冊子の構成を参照)。一人の児童生徒には、14種類の問題冊子の中から1種類が割り当てられるため、児童生徒によって解答する問題が異なります。一人の児童生徒が解く問題数は、第1部と第2部の算数・数学、理科を合わせて、小学校は約50題、中学校は約60題でした。第1部、第2部の解答時間は厳密に規定されており、小学校4年生では各36分、中学校2年生では各45分でした。

(4)算数・数学、理科の得点の算出
14種類の問題冊子には、部分的に共通問題が含まれています。全問題数は、小学校で算数169題、理科176題、中学校で数学212題、理科220題でした。異なる問題冊子に共通問題を含めることによって共通でない問題の困難度が異なる問題冊子間で統計的に比較できるようになります。そのための技法として、国際比較分析では「項目反応理論(Item Response Theory)」を用いて、異なる問題冊子に解答した児童生徒の算数・数学、理科の得点を共通の尺度にのせて比較しています。
結果として、TIMSS2015の算数・数学、理科の得点は、TIMSS1995の参加国の国際平均値を500点、標準偏差を100点の分布モデルにおける推定値として算出されました。平均が500点、標準偏差が100点とは、400点から600点の間に約68%の児童生徒、300点から700点の間に約95%の児童生徒が含まれる分布のことです。TIMSS2015の参加国の平均が500点となるわけではないため、平均500点を国際平均値ではなくTIMSS基準値(国際報告書では、TIMSS Scale Centerpointと記載)と呼んでいます。
TIMSS2015では、2011年調査、2007年調査、2003年調査 と同様に、各国の児童生徒の得点分布を調べるために、625点、550点、475点、400点という75点刻みの国際標識水準が設定され、各国ともその得点以上に何%の児童生徒が含まれるかが算出されました。1999年調査では、上位10%以内(616点以上)、上位25%以内(555点以上)、上位50%以内(479点以上)、上位75%以内(396点以上)によって水準を示していましたが、上位何%以内という水準は参加国によって変わる相対的なものであるため、2003年調査からは絶対的な得点を水準とし、得点の幅を一定にして示しています。このような手法は、アメリカの学力テストである「全米教育進歩評価(NAEP)」でも用いられています。

(5)調査対象者の抽出
調査対象の児童生徒の抽出は、国際的に決められたガイドラインに従って、参加各国の児童生徒の状況の縮図が最もうまく描けるように行われました。我が国の場合、まず学校を抽出し、そこから児童生徒(学級)を抽出する二段階抽出を行うこととし、平成24(2012)年5月1日現在の文部科学省の「学校基本調査」のデータを基に、地域類型、学校種別によって層化して平成25(2013)年9月に学校を標本抽出しました。2015年調査は、我が国では2015年3月に実施されました。

TIMSS2015における主な結果
2015年調査の主な結果を、(1)算数・数学の到達度(2)児童生徒の算数・数学に対する態度(3)理科の到達度(4)児童生徒の理科に対する態度の項目ごとに概略を紹介します。

(1)算数・数学の到達度
・小学校4年生算数の平均得点については、我が国は参加49か国・地域中5番目で、シンガポール、香港、韓国、台湾、日本、北アイルランド、ロシアと続きます(表1-2 算数得点の分布―小学校4年生―を参照)。統計上の誤差を考慮すると、我が国の平均得点は、シンガポール、香港、韓国の得点より有意に低く、北アイルランドの得点より有意に高くなっています。我が国の小学校4年生の算数の平均得点は593点で、TIMSS2011よりも7点、TIMSS2007よりも25点、TIMSS2003よりも28点、TIMSS1995よりも26点高くなっており、統計上の誤差を考慮すると、TIMSS2011、TIMSS2007、TIMSS2003、TIMSS1995の全てと有意差があります。
・中学校2年生数学の平均得点については、我が国は参加39か国・地域中5番目で、シンガポール、韓国、台湾、香港、日本、ロシア、カザフスタンと続きます(表1-3 数学得点の分布―中学校2年生―を参照)。統計上の誤差を考慮すると、我が国の平均得点は、シンガポール、韓国、台湾の得点より有意に低く、ロシアの得点より有意に高くなっています。我が国の中学校2年生の数学の平均得点は586点で、TIMSS2011、TIMSS2007、TIMSS2003よりも17点高く、TIMSS1999よりも8点、TIMSS1995よりも5点高く、統計上の誤差を考慮すると、TIMSS2011、TIMSS2007、TIMSS2003、TIMSS1999と有意差があります。
・算数・数学得点が一定の水準に達した児童生徒の割合については、我が国は国際的にみて小学校4年生及び中学校2年生ともに、625点に達した割合は高く、一方、400点未満はほとんどいません(表1-4 算数得点が一定の水準に達した児童の割合―小学校4年生―、表1-5 数学得点が一定の水準に達した生徒の割合―中学校2年生―を参照)。
・算数・数学得点の男女差については、我が国は小学校4年生及び中学校2年生ともに統計的な有意差はありません。
・小学校4年生の算数問題について、我が国の正答率が国際平均値を10ポイント以上上回る問題は169題中144題で8割を超えています。
・中学校2年生の数学問題について、我が国の正答率が国際平均値を10ポイント以上上回る問題は209題中194題で9割を超えています。

(2)児童生徒の算数・数学に対する態度
・児童質問紙の項目群から、小学校4年生の「算数が好きな程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「算数がとても好き」「算数が好き」「算数が好きではない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「算数がとても好き」に分類された児童の割合が低く(26%)、「算数が好き」「算数が好きではない」に分類された児童の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「算数がとても好き」(621点)「算数が好き」(594点)「算数が好きではない」(567点)となっています。
・生徒質問紙の項目群から、中学校2年生の「数学が好きな程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「数学がとても好き」「数学が好き」「数学が好きではない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「数学がとても好き」「数学が好き」に分類された生徒の割合が低く(それぞれ9%、32%)、「数学が好きではない」に分類された生徒の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「数学がとても好き」(640点)「数学が好き」(614点)「数学が好きではない」(563点)となっています。
・児童質問紙の項目群から、小学校4年生の「算数への自信の程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「算数にとても自信がある」「算数に自信がある」「算数に自信がない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「算数にとても自信がある」に分類された児童の割合が低く(15%)、「算数に自信がある」「算数に自信がない」に分類された児童の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「算数にとても自信がある」(648点)「算数に自信がある」(602点)「算数に自信がない」(559点)となっています。
・生徒質問紙の項目群から、中学校2年生の「数学への自信の程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「数学にとても自信がある」「数学に自信がある」「数学に自信がない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「数学にとても自信がある」「数学に自信がある」に分類された生徒の割合が低く(それぞれ5%、32%)、「数学に自信がない」に分類された生徒の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「数学にとても自信がある」(676点)「数学に自信がある」(625点)「数学に自信がない」(561点)となっています。

(3)理科の到達度
・小学校4年生理科の平均得点については、我が国は参加47か国・地域中3番目で、シンガポール、韓国、日本、ロシア、香港と続きます(表1-6 理科得点の分布―小学校4年生―を参照)。統計上の誤差を考慮すると、我が国の平均得点は、シンガポール、韓国の得点より有意に低く、香港の得点より有意に高くなっています。我が国の小学校4年生の理科の平均得点は569点で、TIMSS2011よりも10点、TIMSS2007よりも21点、TIMSS2003よりも26点、TIMSS1995よりも16点高くなっており、統計上の誤差を考慮すると、TIMSS2011、TIMSS2007、TIMSS2003、TIMSS1995の全てと有意差があります。
・中学校2年生理科の平均得点については、我が国は参加39か国・地域中2番目で、シンガポール、日本、台湾、韓国、スロベニアと続きます(表1-7 理科得点の分布―中学校2年生―を参照)。統計上の誤差を考慮すると、我が国の平均得点は、シンガポールの得点より有意に低く、韓国の得点より有意に高くなっています。我が国の中学校2年生の理科の平均得点は571点で、TIMSS2011よりも13点、TIMSS2007よりも17点、TIMSS2003よりも19点、TIMSS1999よりも21点、TIMSS1995よりも16点高く、統計上の誤差を考慮すると、TIMSS2011、TIMSS2007、TIMSS2003、TIMSS1999、TIMSS1995の全てと有意差があります。
・理科得点が一定の水準に達した児童生徒の割合については、我が国は国際的にみて小学校4年生及び中学校2年生ともに、625点に達した割合は高く、一方、400点未満はほとんどいません(表1-8 理科得点が一定の水準に達した児童の割合―小学校4年生―、表1-9 理科得点が一定の水準に達した生徒の割合―中学校2年生―を参照)。
・理科得点の男女差については、我が国は小学校4年生及び中学校2年生ともに統計的な有意差はありません。
・小学校4年生の理科問題については、我が国の正答率が国際平均値を10ポイント以上上回る問題は168題中92題で5割を超えています。
・中学校2年生の理科問題については、我が国の正答率が国際平均値を10ポイント以上上回る問題は215題中140題で6割を超えています。

(4)児童生徒の理科に対する態度
・児童質問紙の項目群から、小学校4年生の「理科が好きな程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「理科がとても好き」「理科が好き」「理科が好きではない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「理科がとても好き」に分類された児童の割合が低く(53%)、「理科が好き」に分類された児童の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は「理科がとても好き」(577点)「理科が好き」(563点)「理科が好きではない」(551点)となっています。
・生徒質問紙の項目群から、中学校2年生の「理科が好きな程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「理科がとても好き」「理科が好き」「理科が好きではない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「理科がとても好き」に分類された生徒の割合が低く(15%)、「理科が好き」「理科が好きではない」に分類された生徒の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「理科がとても好き」(606点)「理科が好き」(579点)「理科が好きではない」(546点)となっています。
・児童質問紙の項目群から、小学校4年生の「理科への自信の程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「理科にとても自信がある」「理科に自信がある」「理科に自信がない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「理科にとても自信がある」に分類された児童の割合が低く(24%)、「理科に自信がある」に分類された児童の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「理科にとても自信がある」(589点)「理科に自信がある」(568点)「理科に自信がない」(545点)となっています。
・生徒質問紙の項目群から、中学校2年生の「理科への自信の程度」の尺度が構成され、この尺度値の高低によって「理科にとても自信がある」「理科に自信がある」「理科に自信がない」に分類されました。国際平均値と比較すると、我が国は「理科にとても自信がある」「理科に自信がある」に分類された生徒の割合が低く(各々5%、26%)、「理科に自信がない」に分類された生徒の割合が高くなっています。国際平均値と同様に、我が国においても分類と平均得点との間に関連が見られ、平均得点は高い順に「理科にとても自信がある」(637点)「理科に自信がある」(606点)「理科に自信がない」(553点)となっています。

PISA2015について
PISA2015の実施
2015年調査の実施に関連して、(1)調査の内容(2)調査方法(3)結果の分析尺度(4)調査対象の抽出の概略は以下のとおりです。

(1)調査の内容
PISA調査は前述のとおり読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、2000年以降3年ごとに実施していますが、各調査サイクルでは3分野のうち一つを中心分野として重点的に調べ、他の二つの分野については概括的な状況を調べます。今回2015年調査では科学的リテラシーが中心分野となりました。さらに、今回の調査から、情報通信技術(ICT)を切り離すことができない現代社会にあって生徒の知識や技能を活用する能力を測るため、また、よりインタラクティブで多様な文脈の問題を提示するため、従来の筆記型調査からコンピュータ使用型調査へ移行しました。

(2)調査方法
生徒は2時間のコンピュータ使用型調査に解答しますが、この問題は実生活で遭遇するような状況を説明する文章等に基づいて解答するものとなっており、出題形式は選択肢形式及び自由記述形式等から構成されています。また、調査問題のほかに、生徒自身及び学習環境等に関する情報を収集する生徒質問調査(生徒対象)と、生徒のコンピュータに対する態度や経験についての情報を収集するICT活用調査(生徒対象)、学校に関する情報を収集する学校質問調査(学校長対象)も併せて実施しました。

(3)結果の分析尺度
PISA調査では、それぞれの調査分野が最初に中心分野であった調査実施年(読解力は2000年、数学的リテラシーは2003年、科学的リテラシーは2006年)のOECD平均が500点、約3分の2の生徒が400点から600点の間に入るように(標準偏差が100点になるように)得点化されています。なお、2015年調査はコンピュータ使用型調査への全面移行、尺度化・得点化の方法の変更等がなされていますが、OECDや国際請負機関によりその影響が検証され、2015年調査の各国における平均得点はこれまでの調査の各国における平均得点と比較可能とされています。
また、PISA調査では、調査分野ごとに調査問題の難易度をもとに個々の生徒の習熟度(proficiency)を得点化し、それを一定の範囲で区切ったものを習熟度レベル(proficiency level)と呼んでいます。習熟度レベルは、数学的リテラシーでは7段階(レベル6以上、レベル5、レベル4、レベル3、レベル2、レベル1、レベル1未満)、読解力では2009年より、科学的リテラシーでは2015年より8段階(レベル6以上、レベル5、レベル4、レベル3、レベル2、レベル1a、レベル1b、レベル1b未満)となっています。

(4)調査対象の抽出
PISA2015においては、15歳児に関する国際定義に従って、日本では調査対象母集団を「高等学校本科の全日制学科、定時制学科、中等教育学校後期課程、高等専門学校」の1年生、約115万人と定義し、層化二段抽出法によって、調査を実施する学校(学科)を決定し、各学校(学科)から無作為に調査対象生徒を選出しました。

PISA2015問題例
今回2015年調査の中心分野である科学的リテラシーについては、コンピュータ使用型調査のために新規に開発された問題が使用され、一部が公開問題となっています。ここでは2015年予備調査で使用された「暑い日のランニング」を紹介します。
この問題では、与えられた状況をもとに、気温、湿度等といった情報を生徒が自分自身で入力してシミュレーションを実行し、そこから得られた結果に基づき、根拠を示しながら解答を導くことが求められます(図1 PISA2015における問題例「暑い日のランニング」を参照)。
コンピュータ使用型調査へ移行したことによって、こうしたシミュレーション等によるインタラクティブな問題を出題することが可能になり、「実生活において知識を活用できるかを評価する」というPISAの目的に、更に沿った測定ができるようになりました。

PISA2015における主な結果
(1)科学的リテラシー
1 習熟度レベル別結果
表2-1~2-4は科学的リテラシー全体及び科学的能力(コンピテンシー)の3領域について、18か国における生徒の習熟度レベル別の生徒の割合を示したものです。科学的リテラシー全体(表2-1 科学的リテラシー全体における習熟度レベル別の生徒の割合を参照)について見ると、レベル5以上の生徒の割合がもっとも多いのはシンガポールで24%です。日本は15%で3番目に多い割合となっています。また、レベル2以上の生徒の割合がもっとも多いのはマカオで、以下、エストニア、香港、シンガポール、日本、カナダと続きます。
科学的能力(コンピテンシー)の3領域について(表2-2~2-4を参照)、レベル5以上の割合がもっとも多いのは「現象を科学的に説明する」「科学的探究を評価して計画する」「データと証拠を科学的に解釈する」のいずれにおいてもシンガポールで、それぞれ24%、27%、24%でした。日本はそれぞれ17%、16%、17%で、上から3番目、2番目、2番目となっています。
2 平均得点の国際比較
表2-5は科学的リテラシー全体及び科学的能力(コンピテンシー)の3領域別の18か国における平均得点を示したものです。科学的リテラシー全体の平均得点は、シンガポール、日本、エストニア、台湾、フィンランドの順に高く、日本の得点は538点であり2番目に高くなっています。統計的に推測される順位の範囲で見ると、日本はOECD加盟国の中では1位から2位の間、参加国・地域全体では2位から3位の間に位置しています。また、日本においては、2015年調査の得点は2006年調査よりも7点高く、2009年調査、2012年調査との比較ではそれぞれ1点、8点低いですが、いずれも統計的な有意差はありません。
科学的能力(コンピテンシー)の3領域別に見ると、日本は「現象を科学的に説明する」領域では539点、「科学的探究を評価して計画する」領域では536点、「データと証拠を科学的に解釈する」領域では541点であり、各能力ともに国際的に上位に位置していますが、「科学的探究を評価して計画する」能力の平均得点は他の能力に比べると相対的に低くなっています。
3 調査問題の正答率・無答率
科学的リテラシーの問題の日本の平均正答率は58%で、出題形式別に見ると、「選択肢」67%、「複合的選択肢」59%、「求答」63%、「論述」49%でした。また、日本の平均無答率は3%で、出題形式別に見ると、「選択肢」「複合的選択肢」「求答」は 1%、「論述」は8%でした。
4 生徒の科学に対する態度
2015年調査では、生徒質問調査の中で生徒の科学に対する態度に関する、①「探究に対する科学的アプローチへの価値付け」②「科学の楽しさ」③「広範な科学的トピックへの興味・関心」④「理科学習に対する道具的な動機付け」⑤「理科学習者としての自己効力感」⑥「科学に関連する活動」⑦「30歳時に科学関連の職業に就く期待」の七つの観点について尋ねました。
図2は、2006年調査との経年比較が可能な②④⑤⑥の四つの指標をレーダーチャートで示したものです。日本の生徒はOECD平均と比較すると、指標の値が小さく、2006年と比較すると②「科学の楽しさ」指標の値が有意に減少しましたが、④「理科学習に対する道具的な動機付け」⑤「理科学習者としての自己効力感」⑥「科学に関連する活動」の三つの指標の値は、有意に増加しました。また、⑦30歳時に科学関連の職業に就くことを期待している生徒の割合は、OECD平均で 25%、日本は18%であり、2006年調査と比較すると日本においては、5ポイント統計的に有意に増加しました。①~⑥の六つの指標は全て科学的リテラシーの平均得点と正の相関があり、指標が1単位増加すると得点が高まる傾向にあります。また、科学的リテラシーの平均得点における分散説明率が最も高い指標は、①「探究に対する科学的アプローチへの価値付け」指標の14%でした。

(2)読解力
1 習熟度レベル別結果
表2-6は読解力について、18か国における生徒の習熟度レベル別の生徒の割合を示したものです。レベル5以上の生徒の割合がもっとも多いのはシンガポールで18%です。日本は11%で14番目に多い割合となっています。また、レベル2以上の生徒の割合がもっとも多いのは香港で、以下、アイルランド、エストニア、カナダ、フィンランド、シンガポールと続き、日本は87%で8番目に多い割合となっています。
2 平均得点の国際比較
表2-8のとおり、日本の読解力の平均得点は516点で、シンガポール、香港、カナダ、フィンラ ンド、アイルランド、エストニア、韓国、日本の順に高く、日本は8番目です。統計的に推測される順位の範囲で見ると、日本は参加国全体の中では5位から10位の間、OECD加盟国の中では3位から8位の間に位置しています。また、日本においては、2015年調査の得点は2012年調査の得点よりも22点低く、統計的な有意差があり、2009年調査との比較では4点低く、統計的な有意差はありませんでした。前回2012年調査から読解力の得点が有意に低下したことについては、コンピュータ使用型調査に全面移行する中、例えば、紙ではないコンピュータ上の複数の画面から情報を取り出し、考察しながら解答する問題などで戸惑いがあったと考えられるほか、子供を取り巻く情報環境が激変する中で、文章で表された情報を的確に理解し、自分の考えの形成に生かしていけるようにすることや、視覚的な情報と言葉との結びつきが希薄になり、知覚した情報の意味を吟味して読み解くことなど、次期学習指導要領に向けた検討においても改善すべき課題として指摘されている点が見られたところです。
3 調査問題の正答率・無答率
読解力の問題の日本の平均正答率は63%で、出題形式別に見ると、「多肢選択・複合的選択肢」63%、「求答・短答」66%、「自由記述」63%でした。また、日本の平均無答率は6%で、出題形式別に見ると、「多肢選択・複合的選択肢」1%、「求答・短答」3%、「自由記述」13%でした。

(3)数学的リテラシー
1 習熟度レベル別結果
表2-7は数学的リテラシーについて、18か国における生徒の習熟度レベル別の生徒の割合を示したものです。レベル5以上の生徒の割合がもっとも多いのはシンガポールで35%です。日本は20%で7番目に多い割合となっています。また、レベル2以上の生徒の割合がもっとも多いのはマカオで、以下、シンガポール、香港、日本、エストニアと続き、日本は89%で4番目に多い割合となっています。
2 平均得点の国際比較
表2-8のとおり、日本の数学的リテラシーの平均得点は532点で、シンガポール、香港、マカオ、台湾、日本の順に高く、日本は5番目です。統計的に推測される順位の範囲で見ると、日本は参加国全体の中では5位から6位の間、OECD 加盟国の中では1位です。また、日本においては、2015年調査の得点は2003年調査、2012年調査との比較ではそれぞれ2点、4点低く、2006年調査、2009年調査との比較ではそれぞれ9点、3点高いですが、いずれも統計的な有意差はありません。
3 調査問題の正答率・無答率
数学的リテラシーの問題の日本の平均正答率は54%で、出題形式別に見ると、「多肢選(複合的選択肢を含む)」64%、「短答」54%、「求答」53%、「自由記述」38%でした。また、日本の平均無答率は6%で、出題形式別に見ると、「多肢選(複合的選択肢を含む)」1%、「短答」6%、「求答」0%、「自由記述」16%でした。

(4)学習の背景要因
1 学校における学習環境から
学校質問調査における「生徒に起因する学級雰囲気」に関する問いから、日本の生徒に起因する学級の雰囲気は18か国中4番目に良好でした。また、学校質問調査における「学校の活動」に関する11の質問項目について、部活動やボランティア等、様々な「学校の活動」の有無別に見た科学的リテラシーの得点では、日本は、六つの項目(「吹奏楽、合唱」「卒業アルバム、学校新聞、又は雑誌の編集」「科学クラブ」「科学コンクール」「将棋や囲碁のクラブ」「美術部又は美術活動」)について、活動を行っている学校に通う生徒の得点が有意に高く、また、その有無別の得点差はOECD平均より大きくなっています。さらに、生徒質問調査において、最近2週間に学校の無断欠席、授業のサボり、学校への遅刻が「全くなかった」と回答した日本の生徒の割合は、それぞれ98%、97%、88%で、日本の生徒の学校の無断欠席、授業のサボり、学校への遅刻は、国際的に見て極めて少ないことが分かりました。
2 習熟度の違い
生徒の習熟度の違いを、保護者の職業や教育歴、家財や家庭にある本の冊数に関連する生徒の回答から構成された「生徒の社会経済文化的背景」指標(ESCS)から見ると、本指標の標準偏差が、日本は18か国中、韓国(0・68)に次いで2番目に小さい値(0・70)であり、生徒間における家庭の社会経済文化的水準の差は小さいことが分かりました。また、指標値によって分けた生徒の科学的リテラシーの平均得点の差も、「指標による得点分散の説明率」も相対的に小さく、かつ科学的リテラシーの平均得点が高いことから、日本は、科学的リテラシーの習熟度が高く、かつ、家庭の経済状況や教育環境の違いが習熟度に影響する程度が小さいという、教育機会において平等性の高い教育システムであることが言えます。
なお、PISA2015については、日本版国際結果報告書として、国立教育政策研究所編「生きるための知識と技能6 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2015年調査国際結果報告書」(明石書店)を刊行していますので、併せて御覧いただければ幸いです。

調査結果を受けた今後の取組とTIMSS及びPISAの今後について
調査結果を受けた今後の取組
日本が世界トップレベルの学力を維持し、生徒の学習意欲についても改善傾向が見えるといった今回の両調査の結果について、松野文部科学大臣は「各学校や教育委員会において、『確かな学力』を育成するための取組をはじめ、学校教育全般にわたり教職員全体による献身的で熱心な取組が行われてきたことの成果である」とコメントしています。
また、一方で児童生徒の学習意欲については依然として国際平均を下回っていること、PISAの読解力については、前述のような諸課題が具体的に見られたところです。
文部科学省では、こうした結果を踏まえながら、引き続き児童生徒の学力の維持・向上を図るため、学習指導要領の改訂による新しい時代に求められる資質・能力を子供たち一人一人に確実に育む学校教育の実現や、「読解力の向上に向けた対応策」に基づく学習の基盤となる言語能力・情報活用能力の育成、時代の変化に対応した新しい教育に取り組むことができる「次世代の学校」指導体制の実現に必要な教職員定数の充実を推進することとしています。

両調査のこれから
次回のTIMSS2019は、我が国では2019年3月実施の予定です。実施に向けた国際的な議論と準備が開始されており、従来の筆記型調査に加えて、コンピュータを使用した調査の実施についても議論されています。
また、次回のPISA2018は、読解力を中心分野として、引き続きコンピュータ使用型調査により実施する予定です。また、革新分野としてグローバル・コンピテンスを調査する予定です。
今後も両調査の結果から、教育施策にとって更に有益な示唆が得られることが期待されます。

※関連資料は以下のウェブサイトを御参照ください。
○IEA国際数学・理科教育動向調査
(TIMSS2015)
http://www.nier.go.jp/timss/index.html
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344312.htm

○OECD生徒の学習到達度調査
(PISA2015)
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html

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